会社が従業員をセクハラの事実で懲戒処分したところ、処分された従業員が会社に対し、不当な懲戒処分を受けたとして慰謝料請求の裁判を起こしたことから、当事務所が会社から事件の委任を受けました。
裁判では、原告によるセクハラの事実があったかどうかなどが争われました。
セクハラの事実を立証するため、セクハラ被害を受けていた女性従業員が報告書の提出や法廷での証言などをしてくれました。被害を受け恐怖を感じている彼女達にとって、セクハラの事実を思い出し、自分の顔や名前を出して供述をすることは大変な苦痛と勇気を伴うものでした。
今回の事件では、数々の書類や、法廷での被害女性の証言、原告への反対尋問によってセクハラの事実はほぼ明らかとなり、勝訴的な和解を結ぶことができました。また、裁判に協力してくれた女性従業員らが原告から逆恨み被害を受けないための和解条項を盛り込めたことも大きな成果でした。
ところで、勝訴判決や有利な和解を獲得するためには、当たり前ですが、こちら側の主張を支える十分な証拠を裁判所に提出することが不可欠です。
セクハラやパワハラ事案において、会社がハラスメントの事実を認定し懲戒処分すれば、今回のように処分された側から訴えられることがあります。逆に、ハラスメントの事実を認めず処分を行わなければ、ハラスメント被害を主張する側から訴えられる可能性があります。
したがって、会社としては、いずれの立場をとるにしても、慎重に調査を行い、会社の判断を裏付ける証拠を確保することが不可欠です。
そして、どのような調査を行い、どのような証拠を残すべきかは、後に訴訟になった場合を見据えて検討しなければなりません。
今回の事件では、会社が懲戒処分を行う前から当事務所にご相談くださっていたことが、裁判の結果につながりました。長い紛争が解決し、とりあえずほっとしています。
弁護士 鈴木亜佐美