準強姦 性犯罪立証の難しさ
著名なジャーナリストから準強姦の被害を受けたと主張する女性が記者会見を開き、ニュースになっています。
テレビ報道でしか知りませんが、一旦は逮捕状が出たのに、結局は執行されず不起訴処分となったとのこと。女性は検察審査会に審査申し立てをされたそうです。
真実がどうだったか、私には知る由もありませんが、準強姦について十分な立証がなされ、起訴→有罪に至るのが容易でないことは想像がつきます。
準強姦とは、
「女子の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて」姦淫すること
をいいます。
女性を泥酔状態にさせたり、薬物で意識朦朧とさせ、抵抗を奪って性行為に及んだという場合には、準強姦罪が成立します。
性交渉があったこと自体に争いがない場合、主な争点は、「女性が抵抗できないような精神状態、身体状態だったのか」「そのような状態を男性は利用、または自ら仕組んだのか」にあるといえます。
たとえば、女性が被害直後に医師の検査を受けていて、意識を失うような薬物が検出されており、さらに、その薬物を投与したのが男性であるという証拠があるなら、準強姦の立証としてはまず十分でしょう。
しかし、一緒に酒を飲みに行って酔い過ぎた、というような場合だと、女性が抵抗できないような状態にまで酔っぱらっていたのかどうかなど、証明することはなかなか大変です。
少し古いですが、平成23年に内閣府男女共同参画局が発表した「強姦・強制わいせつに関する統計」によると、強姦罪として認知された事件のうち起訴されたものは半分程度で、残り半分くらいは不起訴処分で終わっています。また、不起訴の理由のうち、半分以上が「嫌疑不十分」とされています(平成20~22年)。
性犯罪の被害者が、被害後すぐに行動を起こすのは大変なことですが、加害者に責任を取らせるためには、一刻も早く警察等に相談し、専門医の検査を受けることが肝要です。弁護士も、警察・病院への付き添いや加害者との交渉などのご支援ができます。
【レイプドラッグ】
先日、同業者や警察関係の方とお話をした際に、レイプドラッグが話題にのぼりました。
アルコールにある種の薬物を混ぜたものを摂取すると、薬物作用により無防備で一見大胆な行動をとる状態となってしまい、加害者はそれに乗じて性犯罪に及ぶが、被害者には被害時の記憶がなくなっている、というものです。旭川医科大学の清水教授が研究結果を発表されています。
レイプドラッグの知識がないまま、被害者が一見大胆な行動をとるという点だけを見てしまうと、女性の方が誘いをかけたと誤解してしまいかねません。
無知な先入観で真実を逃し、被害女性に重篤な二次被害を与えてしまわないよう、レイプドラッグについての正しい知識が広まってほしいと思います。
弁護士 鈴木亜佐美